間違っていない私(前編):心理カウンセラー佐藤栄子の【ささる言葉】7

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作家の田辺聖子さんの短編小説に「正しいよそ見の仕方」(『不倫は家庭の常備薬』収録)というエッセイがあります。

自分を労わろうとしない妻に感じる不満をためこまないよう、優しい女性と浮気して発散している夫が主人公なのですが、それが妻にバレてひどく責められ、妻はいちいち「私の言うこと、間違っている?」と同意を求めます。男性はそのたび「…間違ってはいないけど」と答えつつ、複雑な思いに駆られます。

夫婦喧嘩 ©photoAC

家族問題に限らず、実際のカウンセリングで似たようなシチュエーションのご相談がよくあります。そこで共通するのは、小説に出てくる妻のように「自分は正しい行いをしているのに、周りの人がそれをわかってくれず辛い」という主張をする人がいるところです。

ご相談は主張している側からも、されている側からもあるのですが、前者は圧倒的に女性が多く、お話を聞いていてもおっしゃることは間違っていないしご意見ごもっともなのです。

それなのになぜ周りの人達は理解を示さないのでしょうか。

それは、主張されている正しさが相手との最適解にズレがあるからだと思います。

正しさとは人それぞれ違う感覚がありますが、間違ってはいないことに人は反論しづらいものです。そのため正しさを主張した本人はさらに自分の正しさに自信を深め、だんだんそれ以外のものは受け入れなくなってしまいます。「私は間違っていない」という思い込みが強化されていくからです。頑固になるとも言えますね。

それでも自分と同じような正しさを持っている人ばかりが周りにいるならば問題ありませんが、世の中色々な人がいますから「自分がいいと思うこと、好きなこと」より「イヤなこと、キライなこと」が多くなってきます。そうすると毎日のなかで楽しく感じる時間が減りますし、他人の言動に対し苛立ちや怒りを感じることも増えるでしょう。

コロナ禍の「自粛警察」や「マスク警察」と言われている言動は、まさに自分の正しさが暴走している例だと思います。

自粛警察 ©photoAC

私がもったいないと感じるのは、上記のような「私は間違っていないのに!」という悩みを持つ方の中に、努力家で一生懸命で素直で、他人のために尽くすことができる「いい人」が少なからずいらっしゃることです。

本来なら悩むことなく、幸せに生きていっていいはずの人達がなぜ「間違っていない」ことに悩まなくてはいけないのでしょうか。

次回はその思いこみに陥りやすいタイプや、そこからどのように考えを転換していけばいいのかをお話したいと思います。

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この記事を書いた人
佐藤 栄子

心理カウンセラー。大手不動産会社で約20年、主に役員秘書として勤務。衛生管理者の資格取得後、心理学を学ぶ。子育てと介護のため退職。以後、オンラインメディアを中心に心理カウンセラーとして活動中。秘書検定1級・国際秘書検定タイトルホルダー・衛生管理者(Ⅱ種)※個人サイトがないので、お問い合わせはエイルナビまで。

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