こんにちは、ライターのアンバー遥です。
インド系フィジー人の私の夫は、イスラム教徒(ムスリム)です。豚肉を食べないとか、鼻うがいの習慣があるとか、全く接点のなかったイスラムの文化を知ることになり、結婚してからさまざまな価値観の違いを学んでいます。
今回紹介するのは、イスラム教徒がラマダンの断食明けによく食べるというレンズ豆のカレー風味スープ「ダールスープ」です。英語ではDahlと綴り、ダールまたはダルと発音します。ヒンディーやウルドゥなどインド系の言葉で、小粒の豆、または豆料理を意味します。
ラマダンという言葉は聞いたことがあると思いますが、その意味をご存知でしょうか?
遠い異国の宗教の話と思われるかも知れませんが、日本を訪れる外国人観光客や、外国籍の方の国内居住者数が右肩上がりで増えている現在、他文化を知ることはとても大切になってきています。
2020年の東京オリンピック開催に向け、日本国内でも海外の宗教や文化を知り、受け入れようとする体制が進みつつあります。
そのような意味も含めて、今回はイスラム教徒の義務であるラマダンに触れながら、ダールスープについて紹介します。
1. ラマダンとは
ラマダンはイスラム暦の第9番目の月(神聖月)を指します。ラマダンという言葉そのものが断食を意味するわけではありません。この月の、日の出から日没までの時間に断食を行います。それによって食べ物のありがたみを感じたり、貧しい人の境遇に思いを馳せるなど、“平等”の意識を育てるのです。
忍耐を必要とする体験を共有することで、コミュニティの連帯感を高め、協力して貧しい人々への寄付や、断食明けの食事をごちそうするなどの施しも盛んに行われるそうです。
イスラム教徒は約1ヶ月間、日の出から日没までの断食を行いますが、夜明け前と日没後には食事を取ります。夜明け前の食事を「スフール」、日没後の食事を「イフタール」と呼び、断食前には栄養価が高く腹持ちの良い食べ物を、断食後には刺激が強すぎず、空っぽの胃に負担の少ないものを食べます。
今回紹介する「ダールスープ」は、断食明けの「イフタール」によく食べる一品です。
2. 断食後の回復食になるダールスープ
ダールスープはレンズ豆という小さな平たい豆を使います。
レンズ豆は直径1cmにも満たない豆で、2000年以上も前からアジアや地中海地域で栽培されている、とても栄養価の高い豆です。インドのみならず、イタリアやフランスを含めた世界各地で煮込み料理やサラダに使われています。
レンズ豆は、栽培される地域によって色(緑、オレンジ、黄色、茶色など)や、皮のあるなしが異なります。見た目は違っても、味や使い方はどれも変わりません。良質なたんぱく質、ビタミン、食物繊維が豊富で、特に鉄分は他の豆類に比べてもとても多く含まれています。
海外の健康専門誌やインターネットサイトで特集される『世界でもっとも栄養価の高い10大食品』などにも、レンズ豆の名前が並ぶのを目にします。ベジタリアンの方が、お肉の代わりに使うというのも納得です。
夫の実家のダールスープには、レンズ豆に加えてウラド豆も使うのですが、ウラド豆は日本で一般的では無いので、今回は黒ささげを使いました。ウラド豆も黒ささげも手に入らなければ、レンズ豆だけでも充分美味しく作れます。
野菜は、玉ねぎ、なす、人参、そしてニンニクをたっぷり。柔らかく煮込んだ豆と野菜は、胃に負担をかけず、クミンとターメリックが消化吸収も促してくれます。さらにニンニクパワーでスタミナ補給も。まさに断食明けの食事にぴったりスープです。
近頃は、健康やダイエットのために、酵素ドリンクなどを用いた断食(ファスティング)をする人が日本でも増えているようですが、回復食というとお粥などが定番。そこで、このダールスープも採り入れてみるのはいかがでしょう。(油を使うため、長期間のファスティング明けには厳しいかもしれないので、一日ファスティングとか復食期の2日目以降にお試しください)
3. ダールスープの作り方
【材料】3〜4人分
乾燥レンズ豆 1カップ
乾燥黒ささげ豆 1/2カップ (手に入る場合はウラド豆)
塩 小さじ1
ターメリックパウダー 小さじ 山盛り1 (カレーパウダーでも可)
玉ねぎ 1個
なす 2本
人参 1/2本
インゲン 5、6本(あると色味が綺麗ですが、なくてもOK)
ニンニク 1個(10片程度)
ココナッツオイル 大さじ1 (なければオリーブオイル)
クミンシード 小さじ1/2
ガラムマサラ 小さじ 山盛り1
固形コンソメ 1個
塩・コショウ 少々
*鍋は豆だけを煮る深鍋と、材料を全て合わせる大鍋の2つを使用します。
【手順】
1)深鍋に1.5Lの水と塩小さじ1杯を入れ、レンズ豆と一晩水に浸けておいた黒ささげ豆を火にかけます。
沸騰してきたら、ターメリックパウダー小さじ山盛り1杯を加えて15分程煮ます。
*レンズ豆は水に浸けておかなくても煮れば柔らかくなりますが、煮る時間を短くしたい場合は水に浸けておくと良いです♪
2)玉ねぎ、なす、人参はくし切りにして、ニンニクは皮をむいておきます。
5)クミンシード小さじ1/2杯と、ガラムマサラ小さじ山盛り1杯を加えてさらに炒めます。
6)野菜に火が通ったら、15分煮たレンズ豆と黒ささげ豆を、茹で汁ごと大鍋に移します。
7)固形コンソメを加えて、全体に火を通します
8)全体に火が通ったら、塩・コショウで味を整えます。
9)インゲンを半分に切って加え、さっと火を通したら出来上がり。(インゲンはあったら色味が綺麗ですが、なくてもOKです。)
まとめの一言
ニンニクを減らすとぼやけた味になるので、まるまる1個分たっぷり使いましょう。
辛い料理がお好きな方は、鷹の爪を加えて辛くしても美味しいですよ♪
断食明けに食べるほど、身体に優しいダールスープ。
胃腸が疲れているな、と感じる時など、ぜひ作ってみてください。
次回は番外編でフィジーの伝統料理です♪
レモンでしめた生魚をココナッツミルクでマリネした、『ココンダ』を紹介します。