子どもの頃に過ごした田舎のちゃぶ台、入学祝いに買ってもらった勉強机、初任給で買ったお気に入りのチェストなど、思い出に残る家具はありますか?
家具は、気がつけば生活の一部になっていて、家族の歴史を刻んでいることもあります。長く使うものだから、できれば良いものを手に入れたいですよね。
良いものという意味では、憧れはデザイナーズ家具。映画やドラマにも登場する、スタイリッシュで使い心地のよさそうなソファやテーブルを思い浮かべますが、かなり高価なのが難点。そこで上手く活用したいのが、リプロダクト家具です。
たとえば、ケネディ大統領やオバマ大統領が使ったとして有名な、ハンスJ.ウェグナーの【ザ・チェア/PP501,PP503】。正規品は約55万円からとなっていますが、リプロダクト品なら1万5千円程度から幅広い価格帯で自由に選択することができます。
お手頃価格で洗練されたデザインが楽しめる一方、リプロダクト家具ならではの問題点があるのも事実。この記事ではプロに聞いたリプロダクト家具の魅力と気をつけたい点を整理してお伝えします。
1.リプロダクト家具の特徴
リプロダクト、コピー、ビンテージ、混同しがちですが、それぞれ違う物です。その違いを押さえると家具選びに役立ちます。
1-1. リプロダクト家具とは
リプロダクト家具とは、オリジナルデザインに与えられる意匠権(著作権のようなもの)が切れた作品を、復刻して作られた家具のことを言います。その期間は国や時代によって異なりますが、今の日本では登録した日から20年間の意匠権が認められています。
意匠権が切れると、誰でもそのデザインを模倣して製品を作ることができます。デザインや開発、意匠権の登録や管理に費用がかからないため、オリジナルデザインの家具に比べて、低価格に抑えられるのが特徴です。
同じような仕組みで、オリジナルの“新薬”と、特許が切れた“ジェネリック医薬品”があることからリプロダクト家具を【ジェネリック家具】と呼ぶこともあります。

コルビジェ【LC5】リプロダクト
1-2. コピー品との違い
ルールに則って作られているリプロダクト家具に対し、コピー品は意匠権が切れていない物を模倣して作られたルール違反の家具です。
コピー品は、デザイナーや開発企業の思いやこだわりを踏みにじっていると言わざるをえません。品質も保証されないので、いくら安くても購入しないようにしましょう。意匠権が切れていないデザイナーズ家具は、正規の販売店で購入するのが確実です。
1-3. ビンテージ家具との違い
ビンテージ家具は作られてから長い年月が経った物のことを言います。デザイナーズ家具であるかどうかや年月に決まりはありませんが、一般的に20年以上前に作られたデザイナーズ家具を指すことが多いです。
長い歴史を持つ北欧家具では、世界的な人気が高まった1960年前後のミッドセンチュリー時代の家具が、ビンテージ家具として活躍しています。
2. リプロダクト家具の魅力
オリジナルのデザイナーズ家具には圧倒的な歴史とブランド力がありますが、リプロダクト家具にも、リプロダクト品ならではの魅力があります。
2-1. お手頃価格
リプロダクト家具の最大の魅力は、デザイナーズ家具と同等の優れたデザインをお手頃価格で手に入れられることです。
ただ、後述しますが、あまり安価な物だと“リプロダクトのコピー品”という場合もありますので、注意が必要です。
2-2. 選択肢が豊富
リプロダクト家具は、オリジナルデザインにはないカラーバリエーションやサイズ、素材で作られた物があり、選択肢が豊富なのも魅力です。
たとえば、世界初のプラスティック一体型チェアとして有名な【イームズチェア】のオリジナル品の座面はもちろんプラスティック製ですが、リプロダクト家具では布製の物があります。
素材自体も新発明や加工技術の発達で、より耐久性の高い物や汚れにくい物、デザイン性に優れた物が使われているリプロダクト家具もあるので、使う場所や目的によって選ぶことが可能です。

【イームズチェア DSW】リプロダクト パッチワーク
2-3. 日本のライフスタイルに合う
日本のメーカーや販売店が取り扱うリプロダクト家具は、日本のライフスタイルに合うように改良された物が多いのも魅力です。具体的には、
・高温多湿な日本の夏に合わせて傷みにくい加工が施されている
・畳の上で使えるよう脚にカバーがつけられている
などの例があります。
また日本人の体格に合わせることで、オリジナルのブランド家具よりも快適な使い心地になっていることなども、リプロダクト家具ならではの工夫ですね。
3. 非正規リプロダクト家具の注意点
魅力溢れるリプロダクト家具ですが、気をつけなければならないこともあります。正規代理店以外で極端に安価に作られている商品の問題点を紹介します。購入の場合は、以下のページもご確認くださいね。
(参考)お手頃価格のリプロダクト家具:購入時にチェックすべき7ポイント
3-1.品質が一定でない
リプロダクト家具の製作や販売にはルールがないため、品質が一定でないのが実情です。売れ筋の人気ブランド家具となると、専門知識のない業者がリプロダクト家具を取り扱っていることもあるので、特にインターネット通販では気をつけましょう。
3-2.保証がない場合がある
デザイナーズ家具の多くは、メーカーや販売店の保証が付いているのに対して、リプロダクト家具では保証が付いていないことも少なくありません。保証が必要な場合は購入前に確認しておきたいですね。
3-3.自分で組み立てる場合がある
コストダウンのために開梱や組み立て作業は購入者側で行わなければならないことがあります。テーブルやソファなど大きなものになると、女性だけでは難しい作業もあるので、どこからセルフサービスなのか確認しておくことが大切です。
まとめ
リプロダクト家具は、お部屋の主役ともなるようなデザインをお手頃価格で手に入れることができる魅力ある物です。正規のリプロダクト家具は、品質が劣る訳ではなく、現代の日本の生活に合わせて改良されたものもあります。
デザイナーズ家具、リプロダクト家具、ビンテージ家具、それぞれに優れた面があるので、自分のライフスタイルに合った家具選びもまた、一つの楽しみになるのではないでしょうか。