『池田学展 The Pen -凝縮の宇宙-』が、2017年佐賀、金沢、東京を巡回。

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カルチャー
Photo by Clayton Adams ©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery
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ペンで描かれた、1ミリにも満たない緻密な線で広大な世界を描き、現在、国際的に注目されているアーティスト・池田学さん(1973〜)の個展が、2017年、佐賀、金沢、東京を巡回します。

 

池田学「コヨーテ」(部分)

池田学「コヨーテ」(部分) ©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

一日にわずか10㎝四方しか描けないこともあるという細密な技法で3年3ヶ月の時間をかけ、池田学さんは2016年に、東北大震災にインスパイアされた3メートル×4メートルの大作『誕生』を描き上げました。

100点以上の作品を展示した大規模個展は、その大作と共に2017年1月に郷里・佐賀で始まりました。
佐賀では2ヶ月の会期で9万5千人超という、佐賀県立美術館の展覧会において最多入場者数を記録し、4月の金沢、9月の東京へと期待をつなげています。

※2018年3月17日〜5月13日、代表作『誕生』が公開されます!

※新作《誕生》制作風景(部分):Photo by Clayton Adams ©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery
※池田学《コヨーテ》:2008年 紙にペン、インク 30.7×22.7cm〈公財〉東京動物園協会発行「どうぶつと動物園」掲載 

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1.2017年 個展情報:『池田学展 The Pen -凝縮の宇宙-』

1-1.佐賀県立美術館

■2017年1月20日(金)〜3月20日(月・祝) 会期終了

■住所:〒840-0041 佐賀県佐賀市城内1-15-23
Tel.0952-24-3947

1-2.金沢21世紀美術館

■2017年4月8日(土)〜7月9日(日) 会期終了

■住所:〒920-8509 石川県金沢市広坂1-2-1
TEL:076-220-2800  FAX:076-220-2802

1-3.ミヅマアートギャラリー(東京)

池田学展「誕生」

■2017年7月27日(水)〜9月9日(土) 会期終了
・8月10日 池田学ギャラリートーク満員
・8月24日 池田学×布施英俊 特別対談「《誕生》が誕生するまで」満員

1-4.日本橋高島屋(東京)

■2017年9月27日(水)〜10月9日(月・祝)  会期終了

■住所:〒103-8265
東京都中央区日本橋2-4-1
TEL:03-3211‐4111

2.超絶技法のアーティスト・池田学

2-1.自然に囲まれた幼少期

池田学「モリオウムシ」

池田学「モリオウムシ」©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

池田学さんは、1973年佐賀県多久市に生まれました。豊かな自然に囲まれた環境で、虫取りや魚釣りに興じ、幼い頃は画家よりも魚の研究者を志していたそうです。

中学のとき、美術の先生の勧めで新制の佐賀北高校芸術コースを受験、入学後は自由で美術三昧の毎日を送ります。高校生活の中で先輩との交流を通して芸大を志し、東京藝術大学美術学部デザイン科に入学しました。

予備校時代には、既に「全体の構図を決めずに細部から描く」という、現在のスタイルが出来ていたといいます。

入学してからはサッカーや山岳部の部活動に明け暮れました。しかし、その体験が後に作品の中で表現されていくのです。

※池田学《モリオウムシ》2011年紙にペン、インク 22×30cm 個人蔵 撮影:宮島径 

2-2.池田学スタイルの誕生

池田学「巌ノ王」

池田学「巌ノ王」©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

1998年、大学の卒業制作において、部活で体験した山の姿をもとにペンでアイデアスケッチを描き、担当教官だった日本画家の中島千波氏に見せたところ、「このタッチで大きな画面を作ったら面白い」とアドバイスを受けたことから、現在の池田学の世界が始まったのです。

本展でも展示されるこの卒業制作が「巌ノ王」は、2000年の東京藝術大学美術学部卒業制作デザイン賞と平山郁夫奨学金賞(東京芸大)を受賞。2001年、「再生」が第4回はままつ全国絵画公募展大賞ならびに佐賀銀行文化財団新人賞を受賞。2014年には、第25回(平成26年度)タカシマヤ美術賞を受賞しています。

卒業後は、新聞の法廷画家などの仕事をしながら、タイ、ベトナム、中国など、海外を旅して取材を重ね、日本や海外の個展、グループ展などで作品を発表。
2011年からは、文化庁芸術家在外研修員としてカナダ・バンクーバーに滞在し、制作を行いました。

※池田学《巌ノ王》1998 紙にペン、インク 195×100cm おぶせミュージアム・中島千波館蔵 

2-3.海外での活躍

2011年にニューヨークのジャパンソサエティで開催された「Bye Bye Kitty!!!」展では、ニューヨーカー誌に「魔法のよう」と評され、同年、作品「存在」がニューヨークタイムズのアート&デザインの記者が選ぶ、その年に最もインパクトを与えた作品“Best of 2011”の一つにも選出されました。

そして、この展覧会に来ていたアメリカ・ウィスコンシン州マディソンのチェゼン美術館館長により、2013年から3年間、同館の滞在制作プログラムArtist in Residenceの第一回アーティストとして招聘されます。

2-4.震災を超えて生まれた「誕生」

池田学「誕生」

池田学「誕生」photography by Eric Tadsen for Chazen Museum of Art ©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

チェゼン美術館の滞在プログラムは、文化交流を目的に作家を招き、作家は期間中、提供された館内のスペースで制作を行います。そして、開館日は毎日午後の1時間制作スペースを解放し、来場者は制作中の作品や作家の制作風景を自由に見学できるというもの。

2011年の東日本大震災を経て、自然の猛威によって人間の命や社会が簡単に奪われてしまうことに深い悲しみと衝撃を受けていた池田学さんは、ここで3年3ヶ月の期間をかけて、3メートル×4メートルの大作「誕生」を完成させたのです。

大海に立つ大きな樹、そこに咲く満開の花々。ひとつひとつの花には人々の暮らしや生、死などが表現されています。自然災害を乗り越え続いていく命への畏敬の念がこもった、希望に満ちた作品となりました。

素顔の池田学さんは、奥様と三人の娘さんの五人家族。緻密な制作とのバランスを取るため、今でも趣味のアウトドア活動は欠かせないとか。釣りやロッククライミング、スキーなど、その体験は作品の中にも描きこまれています。

※池田学《誕生》2013-2016 紙にペン、インク、透明水彩 300×400cm photography by Eric Tadsen for Chazen Museum of Art

★《誕生》の細部を解説した本が出ました! 誕生の中に描かれたストーリーが一つずつ解説されていて、とっても面白いです。

≪誕生≫が誕生するまで The Birth of Rebirth

 

>>>池田学作品の楽しみ方と「池田学展」レポートはこちら

 

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この記事を書いた人
瀬津 由紀子

1963年東京生まれ。家業である古美術商・瀬津雅陶堂を手伝う傍ら、フリーライターとして活動。講談社、世界文化社の婦人誌を中心にインタビュー、アート、旅行などの取材、ライティングを行う。
2000年より株式会社オフィス・アイシス代表取締役。「エイルナビ」編集長

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